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今月の実務の動き 今月の実務の流れがわかる

人事労務について、最近の注目すべき点や改正などの情報をお届けいたします。

勤務地限定職員と配置転換

2015年2月20日 掲載

 就業規則上、配転命令がある旨が定められていたとしても、労働者との間で個別に勤務地を限定していた場合には、当該個別合意が優先され(労働契約法7条但書)、企業は勤務地の変更を伴う配置転換を命じることができなくなります。
 個別合意は、明示的なものに限られず、黙示的なものでもよいとされています。そのため、契約書上、勤務地を限定していなかったとしても、転勤を命じた場合に労働者から争われる可能性があるというリスクは否定できません。
 
 そこで、どのような場合に、勤務地限定に関する黙示の合意が認められるかですが、主として、当該企業における転勤の実施例の内容・頻度等、事業の規模、事業所の数、従業員の構成などから見てどの程度転勤を必要とする状況にあるか、労働者の性質・属性(主婦のパートタイマーである、あるいは大卒の正社員である等)といった事情を総合考慮して、黙示の合意の成否が検討されます。
 
 勤務地限定に関する黙示の合意が認められた裁判例としては、日本レストランシステム事件(大阪高判平成17.1.25)があります。同事件では、関西地区における管理職候補として現地採用されたこと、採用面接の際2歳の長女の病状(心臓病三種合併症)を述べ、難病のためかかりつけの病院を変えることができないとして、関西地区以外での勤務に難色を示していたこと、入社後も、関西地区外に転勤する可能性について説明を受けたり、打診されたりしたこともなく、会社全体としても、マネージャー職が地域外に広域異動させられることはまれであったこと等から、勤務地を関西地区に限定する黙示の合意があったと認定されています。
 
 同事件では、長女が難病である特定疾患に罹患し、主治医による定期的な観察、治療が不可欠なものとされており、経過観察の結果3回目の手術が必要となる場合もある旨説明され、また、容態の急変などの緊急時には直ちにかかりつけの大阪市立総合医療センターで治療を受ける必要があること等といった事実関係が認定されていました。したがって、仮に勤務地限定の合意がなかったとしても、関西地区から東京への転勤を命じることは、権利の濫用として無効となる可能性が高かったといえます。実際、判決は、勤務地限定の合意を認定しながらも、あえて、転勤命令が権利濫用にあたるかということを検討・判断しており、結論として、業務上の必要性はなく、また労働者の被る不利益も相当な程度を超えているとして、権利の濫用に該当すると認定しています。
 
 同事件は特殊な事情もあった事例ですが、いずれにしても、採用時の説明・やり取り、会社における転勤事例といった事情は、勤務地限定の有無を判断するにあたって重要な考慮要素になるものと考えられます。
 
 会社としても、従来の慣行を変えて、勤務地の変更を実施したいと考えた場合には、契約書上、勤務地限定の合意がないからといって安易に転勤を命じるのではなく、他の同種労働者の勤務実態・転勤事例、採用時の説明・やり取りの内容等を踏まえて、勤務地限定が実質的に成立していないかということを慎重に判断する必要があるでしょう。
 
 

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