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今月の実務の動き 今月の実務の流れがわかる

人事労務について、最近の注目すべき点や改正などの情報をお届けいたします。

パワハラ

2016年12月20日 掲載

 近年、パワハラを訴える事案が増加しています。労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」案件の相談件数は、平成14年度には相談件数全体の5.8%であり、解雇(28.6%)、労働条件の引き下げ(16.5%)、退職勧奨(6.3%)に次ぐ4番目の件数でしたが、平成27年度には相談件数全体の22.4%となり、相談案件の各カテゴリーの中で4年連続のトップとなっています。

 

 このような背景には、パワハラが社会問題として一般的に認知され、労働者の権利意識が向上したことのほかに、企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大など多様な要因があるものと考えられます。

 

 パワハラに関して法律上の定義はありませんが、厚生労働省のワーキンググループがまとめた報告書によれば、パワハラとは次のように定義されています。

「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」

 

 同報告書では、具体的なパワハラの類型として以下のものが挙げられています。

① 暴行・傷害(身体的な攻撃)

② 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

⑤ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 

 ただし、上記類型以外であっても、不合理な人格権侵害はパワハラに該当します(たとえば、大勢の前で立たせたまま、大声でどなり続けるなど、業務上の指導であったとしても行き過ぎた行為など)。

 パワハラが行われた場合、加害者は被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負担することになります。また、会社も、使用者責任として連帯責任を負うことになります。被害者からの相談を放置していた等、事後対応の不備があれば、パワハラに関する使用者責任とは別個の法的責任を負う可能性もあります。

 

 加害者が被害者に対して賠償すべき損害は、慰謝料だけには限りません。パワハラの結果、うつ病に罹患して欠勤すれば、欠勤期間の給与相当額が休業損害として賠償の対象になることがあります。たとえば、ファーストリテイリングほか(ユニクロ店舗)事件(名古屋高判平20.1.29)では、暴言・暴行被害により妄想性障害を発症したという事案につき、その後9年間の休業損害2,500万円が損害として認められた上、本人の性格等も加味して60%の減額がなされました。また、美研事件(東京地判平20.11.11)では、いじめ、退職強要により、うつ病や激しい腰痛に罹患したという事案につき、慰謝料80万円のほか、上記疾病により少なくとも1年間は就労できなくなったものとして、基本給1年分約225万円が休業損害として認められました。

 

 さらに、欠勤にとどまらず、うつ病等の精神疾患に罹患した末に自殺に至った場合には、死亡による逸失利益も損害賠償の対象となります。川崎市水道局(いじめ自殺)事件(東京高判平15.3.25)では、慰謝料のほかに死亡に伴う逸失利益として、給与分約4,470万円、退職手当分約220万円が損害として認定された上、被害者本人の資質・心因的要因も考慮して7割の過失相殺がなされました。

 

 このように、パワハラの事実が認定された場合、慰謝料にとどまらず、その後の休業損害や、自殺に伴う逸失利益も賠償の対象となることがあります(ただし、本人の性格等を考慮して、一定の過失相殺が認められる可能性はあります)。

 

 ひとたびパワハラが行われれば、被害者は当然のことながら、企業にもレピュテーションリスクを含めた多大な損害をもたらすことになります。21世紀職業財団が実施したアンケートによれば、パワハラ対策の中で効果があったと実感できた取り組みのうち、もっとも回答数が多かったものは、管理職や一般社員に向けた講演や研修会となっています。法律の枠組みや裁判例の動向などは、専門的知識も必要になるため、企業としては、講演や研修会を積極的に開催して啓発に努めることが重要でしょう。

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