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今月の実務の動き 今月の実務の流れがわかる

人事労務について、最近の注目すべき点や改正などの情報をお届けいたします。

退職後の競業行為

2018年1月22日 掲載

 昨今、政府の方針に基づき、企業が就業規則上設けている兼業規制について緩和するよう求められていますが、だからといってどのような兼業でも許されるようになるわけではなく、たとえば、会社と競業するような行為は依然として許されないものと考えられています。このように、在職中の労働者は競業避止義務を負っています。

 一方で憲法22条1項は職業選択の自由および営業の自由を保障しているため、退職後にも競業避止義務を負うかどうか、仮に負うとしてどの範囲かということは別途問題になります。

 この問題を考えるにあたっては場合分けをする必要があります。
 大きく分けて、①損害賠償を請求する場合、②退職金の減額・不支給(あるいは返還)の措置を取る場合、③競業行為の差止めを求める場合という3つのパターンが考えられます。
 
 ①損害賠償請求に関しては、退職後の競業制限に関する特約があればそれに基づき処理されることになりますが、長期間にわたり過度な違約金を課しているような場合には、経済的な効果としては退職金の大幅減額に等しいため、賠償額が制約される可能性もあります。そのような特約がなければ、自由競争の範囲を逸脱しているか否かという観点から不法行為該当性を判断することになります。後述する退職金の減額・不支給や競業行為の差止請求と異なり、損害賠償請求に関しては特約がなかったとしても民法上の不法行為規定に基づき請求する余地があるものと考えられます。ただし、退職後の競業を制限したいのであれば、一般的には事前に誓約書等を徴求しておくべきでしょう。
 
 ②退職金の減額・不支給・返還に関しては、原則として、会社規程上の根拠が必要となります。規程上の根拠がなくとも、支払済みの退職金について信義則に基づき返還請求が認められている裁判例も稀にありますが、救済事例の意味合いが強いため、会社としては事前に規程を整備することが重要になります。
 
 ③次に、競業行為の差止めを求める場合ですが、職業選択の自由に及ぼす制約は、退職金の減額・不支給よりも大きくなるため、やはり特約がなければ差止めを求めることはできないと考えられます。裁判例では、退職後の競業を禁止する特約に基づく差止請求や差止めの仮処分が認められている例もあるため、会社としては、実際に裁判で争うか否かは別にしても、心理的制約の意味も含め、退職時には競業制限に関する誓約書を徴求すべきでしょう。
 
 このように、①損害賠償の請求、②退職金の減額・不支給・返還、③競業行為の差止めといういずれの選択肢を検討する場合であっても、誓約書を徴求することや規程の整備を行うが重要になりますが、その際、労働者の職業選択の自由や営業の自由に対する過度の制約になっていると、誓約書に基づく損害賠償請求・競業行為の差止めや、会社規程に基づく退職金の減額・不支給処分が認められないおそれがあるため注意する必要があります。具体的には、禁止される競業行為の範囲、競業行為を禁止する期間・場所的範囲、競業行為を禁止する必要性(営業秘密・ノウハウの重要性等)、代償措置の有無・程度等に照らして、上記①~③の措置を取ることの可否が判断されることになります。
 
 裁判例では、専門的な業務に従事していた者につき、転職するには限られた範囲でしか就労の機会が得られないこと、禁止期間も1年間と比較的長いこと、退職金の額も代償として十分であるとはいえないことなどから、競業避止規定に合理性は認められず、同規定違反を理由とした退職金不支給は認められないとした例がある一方で、フランチャイザーがフランチャイジーに対して定めた競業避止義務(禁止期間は3年間、禁止場所は岡崎市内、禁止業務は弁当の製造・販売・宅配)の規定が有効とされ、損害賠償請求および差止請求が認められた例があります。
 
 会社の業種や業務の実態、労働者固有の能力・キャリア等に照らして、労働者の転職先が著しく制約されることがないか等といったことに十分に配慮して誓約書や規程類を整備することが重要と考えられます。

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