税務に関する旬のトピックスや、注意すべき項目などについて、わかりやすく解説いたします。
2012年5月25日 掲載
減価償却は、法定耐用年数と償却方法によって減価償却費の損金算入限度額を計算し、損金経理された減価償却費のうち、損金算入限度額までの金額を損金算入する制度である。
これに対して特別償却は、租税特別措置として、普通償却限度額を超える償却費の損金算入を認めるもので、特定の政策目的等から、設備投資を促進するために設けられているものである。特別償却には、取得価額の一定割合の償却費の損金算入を認める狭い意味での「特別償却」と、普通償却限度額の一定割合を償却限度額に加算する「割増償却」とがあるが、特別償却のうちには、取得価額の一定割合の税額控除を認める特別税額控除との選択となっているものもある。
たとえば、中小企業者等の機械等の特別償却、いわゆる中小企業投資促進税制では、一定の対象設備等を取得等して事業の用に供した場合には、30%の特別償却か7%の税額控除の選択適用が認められている。
また、特別償却限度額は、普通償却限度額とは別枠で損金算入されるから、特別償却を適用する年度の損金算入限度額は、普通償却限度額と特別償却限度額との合計額となる。特別償却不足額は1年間の繰り越しができるのが一般的であるが、特別償却不足額があっても、翌事業年度の定率法適用資産の普通償却限度額は、満額の特別償却がなされたものとして計算される。
一方、特別償却額の経理処理は、普通償却と同様に、帳簿価額を直接減額するか、減価償却累計額として処理するのが原則だが、このような処理をした場合には、企業会計面で減価償却費が過大になってしまうことになる。
このため、租税特別措置法では、準備金方式による特別償却費の損金算入も認めている。準備金方式による場合には、損金経理方式と利益処分方式のいずれかの方法による処理が認められている。
損金経理の場合には
(借)特別償却費 ××× (貸)特別償却準備金 ×××
という経理処理を行う。
利益処分の場合には、
(借)繰越利益剰余金 ××× (貸)特別償却準備金 ×××
となり、特別償却準備金に相当する金額を、申告調整により損金に算入することになる。
特別償却の適用を受けるためには、申告書に記載することが必要であるが、対象となる設備等であることを証明する主務官庁の証明書の添付が必要となる場合もある。また、平成23年4月1日以後に終了する事業年度からは、「適用額明細書」の添付も必要となっている。