税務に関する旬のトピックスや、注意すべき項目などについて、わかりやすく解説いたします。
2012年9月25日 掲載
所得税では、災害や盗難、横領等によって所有資産に損害を受けた場合には、雑損控除の対象とされているが、生活に通常必要でない資産に受けた損害は対象外とされている。
生活に通常必要のない資産とは、次のような資産のことである。
① 競走馬などの射こう的行為の手段となる動産
(ただし、事業規模で競走馬を所有している場合を除く)
② 別荘など保養等の目的で所有する不動産
③ 1個または1組の価額が30万円を超える貴石、半貴石、貴金属、書画、骨董など
④ 高級スポーツカーなど生活に通常必要でない動産
これらの資産が災害で被害を受けても雑損控除の対象にはならないが、譲渡所得の金額があれば、その金額から損害額を控除することができる。引ききれない金額は、1年間繰越して翌年の譲渡所得の金額から控除することができるが、それでも引き切れない損失の金額は打ち切られる。
また、生活に通常必要でない資産を譲渡した場合の譲渡益は譲渡所得として課税される。しかし、損失が生じた場合には、他の譲渡所得の金額があればその金額から控除できるが、譲渡所得以外の所得と通算することはできない。 これに対して、生活に必要な財産は、災害等で損害を受ければ、その損害額を雑損控除の対象とすることができる。生活に必要な財産とは、居住用の家屋や、生活に必要な什器、家具などの家財等である。
また、生活に必要な財産のうち、生活用の動産は、譲渡益が出ても課税されないことになっている。通常は、什器や家具等の動産を譲渡して、譲渡益が生じることはないから、あまり意味のない規定にも見えるが、もともとは、終戦直後の物資不足当時に設けられた規定である。その裏返しで、こうした生活用動産を譲渡して譲渡損失が生じても、その譲渡損はなかったものとされることになっている。
生活に必要でない財産の譲渡損失は、他に譲渡所得があればそこから控除できるが、生活用動産の譲渡損失は他の譲渡所得からも控除できない。
生活に必要な財産かどうかで判断に迷うケースが多いのが自動車である。台風等によって所有する自動車に被害を受けた場合、それが生活に必要な財産に当たれば、その損害額を雑損控除の対象とすることができる。被害を受けた自動車を通勤等に使用していれば問題なく生活に必要な財産だが、そうでない場合でも、趣味のための高級車でなければ、適用が認められるケースが多いようだ。なお、損害保険金が支払われる場合には、保険金を控除した実質的な損害額のみが対象となるのは当然である。