税務に関する旬のトピックスや、注意すべき項目などについて、わかりやすく解説いたします。
2015年12月16日 掲載
日本にとって台湾は、租税条約のない国・地域の中で、最大の直接投資が行われている地域であり、経済関係が緊密であることから、日本および台湾の経済界からは、租税条約の締結が期待されている。
しかしながら、台湾に対する日本の基本的立場は、非政府間の実務関係を維持することになっており、現在のところ、日本と台湾の間で租税条約等を締結することはできない状況にある。
そのような日本と台湾の関係を背景に、平成27年11月26日、日本側の公益財団法人交流協会と、台湾側の亜東関係協会との間で「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め(「日台民間租税取決め」)」が署名された。
この取決めは、日本と台湾の間の租税条約に相当する枠組みであり、所得が生じる地域(源泉地)の課税の制限、課税上の問題の解決、税務上の協力関係について、日本・台湾それぞれの関係当局の必要な同意が得られるよう両協会が相互に協力することを定めており、日本・台湾間の健全な投資・経済交流の促進に資する内容となっている。
この取決めにより、日本・台湾間で支払われる配当、利子、使用料などの投資所得について、所得が生じる地域(所得源泉地)における課税の税率は、下記のとおり引き下げられる。
配当 | 利子 | 使用料 | |||||
日台民間租税取決め | 10% |
免税(政府、中 央銀行等受取) 10%(その他) |
10% | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現行 | 台湾 | 20% |
15%(金融商 品) 20%(その他) |
20% | |||
日本 |
15%(上場) 20%(非上 場) |
15%(金融商 品) 20%(その他) |
20% |
また、平成28年度の税制改正では、この「日台民間租税取決め」の内容を日本国内で実施するために、国内法が整備される。
具体的には、企業が進出先の税務当局から受けた課税について問題が生じた場合に、これを解決する枠組み(相互協議)や、
日本・台湾それぞれにおけるより効果的な税務行政の執行のため、租税に関する情報を交換する枠組み(情報交換規定)の創設が予定されている。