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ZEIKENPLUS 2010 Winter

IFRSの影響、人材教育の必要性
文=週刊経営財務編集部

金融庁の企業会計審議会は6月30日、国際会計基準(IFRS)の適用時期と課題をまとめた「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」を公表しました。これにより、上場企業は2010年3月期の年度の連結財務諸表から、IFRSを早期適用できることが明らかになりました。いよいよ日本でも100カ国以上が採用するIFRSの導入に踏み切ったのです。
ただ、会計関係者の多くが指摘する通り、IFRSの特性(特徴)は日本には馴染みのないものです。それは、導入による日本企業へのインパクトを懸念する声からも伺えます。
本稿では、あらためて(1)IFRSとは何か、(2)IFRS導入が日本企業に与える影響、(3)人材教育、を簡単にご紹介することにします。

1.IFRSとは何か?

IFRSは、International Financial Reporting Standardsの略語であり、※国際会計基準審議会(IASB、本部ロンドン)が設定する一連の会計基準を指します。直訳は「国際財務報告基準」ですが、金融庁などは、これまで慣れ親しんだ「国際会計基準」(IAS)と呼称しています。

※国際会計基準審議会(IASB)
IASBは、2001年に設立され、民間組織である国際会計基準委員会財団(IASCF)を母体とする会計基準の設定機関です。15名(10カ国)の理事から構成され、任期は5年です。日本からは山田辰己氏(公認会計士)が理事として参画しています。
IASBの議長は、英国スコットランド出身のデビッド・トゥイーディー卿。勅許会計士(日本でいう公認会計士)で、英国会計基準審議会の初代議長を務めた人物です。類い稀なる政治力を有し、「IFRSを世界に広めた最大の貢献者」とも称されています。
IASBの特徴は、アングロサクソン系が大きな影響力を持っていること。理事の過半数(8名:イギリス2、アメリカ4、オーストラリア1、南アフリカ1)を占めています。

IFRSとは何か?

★IFRSが世界100カ国以上で採用されているのは?
IFRSは現在、世界100カ国以上で採用されています。その背景として3つのトピックが挙げられます。
第一は、2000年に、IOSCO(証券監督者国際機構:各国の証券監督当局等により構成、米国SECや金融庁らが参画)が国際会計基準(IAS)の支持を表明したこと。これにより、IASは、国際的資金調達の際に利用される会計基準として認められることになりました。
第二は、2002年5月、EUが域内の上場企業に、2005年からIFRSの強制適用を決定したこと。適用対象となる上場企業は約7,000社です。2005年より前にIFRSを適用している企業は300社に満たなかったことからも、そのインパクトの大きさが窺えます。
第三は、2002年10月にIASBとFASB(米国財務会計基準審議会)との間でコンバージェンス(会計基準の共通化)に向けた基本合意(ノーウォーク合意)がなされたこと。
以上の3点を背景に、IFRSへの支持は国際的に拡大していったのです。

★IFRSの特徴とは?
IFRSの特徴は、(1)原則主義、(2)貸借対照表重視(利用者志向)、(3)公正価値測定、と言われています。特に、(1)と(2)は、日本基準((1)細則主義、(2)損益計算書重視(作成者志向))に馴染みのないものです。
(1)原則主義(プリンシプル・ベース)とは?
日本基準や米国基準が採用する細則主義(ルール・ベース)とは対照的に、会計基準には会計処理の基本的な考え方を定めるにとどめて、数値基準など詳細な取扱いを設けないとする考え方です。実際の適用方法は各企業が実態に応じて判断、その適否を監査人の専門的な判断に委ねるというアプローチを採用しているのです。原則だけを示し、具体的な運用は各企業に委ねるという姿勢が、各国固有の経済環境に馴染みやすく、世界100カ国以上でIFRSが受け入れられている理由でもあります。
(2)貸借対照表重視(利用者志向)とは?
IFRSの各基準の基礎となる考え方を示した「概念フレームワーク」は、財務諸表の目的について、主に投資家の経済的意思決定(ある企業の株式を買う・売る・保有し続ける)に適合した情報を提供することにあると説明しています。ですから、将来のキャッシュ・フローの予測に資するような資産(負債)情報、すなわち、貸借対照表重視のアプローチが採られています。損益計算書には重きが置かれていません。象徴的なのは、純資産(資産負債の差額)の増減(資本取引を除く)である「包括利益」を重要な経営指標としていることです。

2.IFRS導入が日本企業に与える影響

(1)原則主義への対応~自らの会計判断の正当性を立証することにも
原則主義への移行の際には、取引実態を把握したうえで、会計基準に則した適切な会計処理を行うための考え方を示せるようにする必要があります。日本の場合、詳細な税務のルールに則った実務が多く、そこに記されている数値基準等に従っていけば、適切な会計処理が導き出されることが多くあります。取引事実の認定に疑義がない限り、会計基準の定める通りに適用していれば、説明する必要性はなかったのです。しかし、原則主義の下では、自らの会計判断の正当性について立証することが求められることもあります。
この点、早期適用に向けた準備を進めている富士通では、「会社が頭を使ってルールを考え、決定しなければならないのだが、会社が決めたルールが『原則』に則ったものかどうかを監査人と合意しておく必要がある~。場合によっては、基準および解釈指針に書いていない具体的な事項について、監査法人が内部でIFRS監査上のガイドラインを準備していることもあり、いったん会社側で方針や考え方を出しても、監査の過程で調整しなければならない場合があり得る。」と述べています。

(2)会計処理面での対応
~税法の耐用年数は認められない!?
(1)に関連した会計処理の論点を1つだけ紹介します。
固定資産の減価償却の取扱いは、IAS16号などで定められています。そこでは、耐用年数・残存価額・減価償却方法を企業独自で見積ることを求めています。
耐用年数については、固定資産それぞれの実態に応じて見積る、いわゆる経済的耐用年数を用いなければいけません。ですから、法人税法上の耐用年数に従っているだけでは、認められないことも考えられます。

3.人材教育

会計・財務のみならず、海外事業、経営戦略、内部統制、システムといった広範囲にわたる部門を関与させて、全社的な導入準備態勢を整えることが重要です。それにはまず、経営陣がIFRS適用への強力なコミットメントを示し、トップダウンで社内の意識の切換えを行うことが必要です。 導入準備を進めている企業では、社内から組織横断的に人材を集め、準備室等を発足させています。先述の富士通は2004年に「IFRS推進室」を立ち上げ、「取り組みで重要なことは、単なる会計手続きの見直しとしてではなく、会社の仕組みを変える、経営の質を高めることを当初から念頭に置いてきたことである。財務経理部門のプロジェクトではなく、トップマネジメントを含む強いコミットメントが不可欠である。」と指摘しています。
欧州の経験からは、実務適用能力を高める手段としてケース・スタディの有用性が指摘されています。また、コアとなるべき人材は早期からプロジェクトに参画させ、実務経験を積ませるべきでしょう。海外子会社等からIFRS適用経験者を登用することも一案です。
なお、企業会計審議会の中間報告によりますと、「例えば、IFRSに精通した公認会計士や公認会計士試験合格者を積極的に活用することも一つの方法として」推奨しています。

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