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ZEIKENPLUS 2010 Summer

グループ法人税制解説
新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田達也

平成22年度税制改正により、「グループ法人税制」が創設されました。資本金の大小に関係なく、すべての法人に対して強制的に適用される税制であり、影響が広範囲に及ぶことが予想されます。 また、中小の同族会社においても、オーナー一族が複数の法人の株式等の全部を所有しているような場合の法人同士の取引に適用されることになります。一定の資産の譲渡について、譲渡損益を繰り延べなければならないなど、実務に影響の大きい内容が少なからず含まれています。
本稿では、新しく導入される「グループ法人税制」について、その仕組み・内容、実務上の取扱いなど、様々な角度から総合的に解説します。

Q1.「グループ法人税制」が創設されたようですが、その導入の背景や適用時期について教えて下さい。

(1)「グループ法人税制」が創設された背景
企業組織再編に係る法制度が急速に整備された影響により、ここ数年、会社分割を利用した分社化や株式交換による完全子会社化、株式移転を用いた持株会社化など、結果として100%の親子会社関係が創設されるケースが顕著な増加傾向にあります。企業グループ経営の進展といってよいものと思われます。
また、中小企業においても、事業承継、新規事業の展開、事業部門の分社化など、事業運営の独立性については程度の差がありますが、100%子会社の設立・取得、(親族を含めた)同族株主グループによる複数の法人の所有が行われるケースがみられます。
「グループ法人税制」は、そのようなグループ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現する観点から設けられたものです。100%完全支配関係にある法人同士を一体とみて、課税を行うという考え方に基づく税制です。

●平成11年 商法改正
株式交換・株式移転制度の創設
(100%親子関係をつくる企業再編制度である。)

●平成12年 商法改正
会社分割制度の創設
(分社化により、100%子会社をつくるケースが多い。)

「グループ法人税制」の具体的内容については後で詳しく説明しますが、例えば100%完全支配関係にある法人間の一定の資産の譲渡について譲渡損益を繰り延べる、100%完全支配関係にある完全子法人株式について配当を受け取る場合に、負債利子控除は適用しない(=受取配当全額が益金不算入となる)など、実務に影響の大きい内容が数多く含まれています。

(2)適用時期
①受取配当等の益金不算入(100%グループ法人間の配当について、負債利子控除をしない)、②資本金5億円以上の大法人の100%子法人についての中小企業特例の適用除外、以上の2つについては、事業年度単位の適用時期となるため、平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用となります。一方、他の改正(100%グループ内の法人間の一定の資産の譲渡損益の繰延、100%グループ法人間の寄附金の取扱い、100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に譲渡する場合の取扱いなど)は、平成22年10月1日(平成22年10月1日以後の取引)から適用されます。

Q2.「グループ法人税制」が適用されるグループとは、どのようなグループですか。また、中小企業にも影響してくるのでしょうか。

図1

「グループ法人税制」は、資本金に関係なく、一定の要件を満たしたすべての法人に強制適用されます。
「グループ法人税制」が適用される100%グループ内の法人とは、完全支配関係(原則として、発行済株式の全部を直接または間接に保有する関係)のある法人です。
具体的には、同一の者が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下、「当事者間の完全支配の関係」という)、または同一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2条12の7の6)。
完全支配の関係とは、同一の者が法人の発行済株式等の全部を保有する場合における当該同一の者と当該法人との関係をいいます(法令4条の2第2項)。
同一の者は、法人だけでなく個人も含まれますので、図1のような法人同士の関係が該当します。

図2

また、完全支配の関係があるかどうかは、直接保有割合と間接保有割合を合計して発行済株式の全部を保有する関係であるかどうかで判定しますので、図2のような法人間の関係も該当します。
右記のように、100%子法人が発行済株式の100%を保有している孫法人は、親法人からみれば間接に100%保有していることになるため、100%グループ内の法人に含まれます。
先に説明しましたように、同一の者が複数の法人の発行済株式等の全部を保有する場合のその法人間の取引についても適用されますが、同一の者が個人である場合は、その者およびこれと特殊の関係のある個人が100%保有しているかどうかで判定します。具体的には、その個人と次に掲げる特殊の関係のある個人も含めて判定します(法令4条の2第2項)。
したがって、図3のような法人相互の関係も該当します。
なお、連結納税制度と同様に、従業員持株会(株式を取得することを主たる目的とする組合)およびストック・オプションにより役員・従業員が取得した株式(新株予約権の行使等により取得したもの)の合計数が5%未満であるときは、ゼロとして取り扱います(法令4条の2第2項)。したがって、従業員持株会およびストック・オプションにより役員・従業員が取得した株式の持株割合が5%未満であり、かつ、残りをすべてオーナーおよびその親族が所有している場合は、完全支配関係に該当します。

100%グループ内法人

特殊の関係のある個人(法令4条1項)

図3

Q3.「グループ法人税制」の仕組み・内容を教えて下さい。

「グループ法人税制」は、完全支配の関係にある法人同士を一体としてとらえて課税を行うという考え方から、次のいくつかの取扱いが(強制的に)適用されます。

繰り延べられた譲渡損益の計上時期

(1)完全支配関係にある法人間の一定の資産の譲渡に係る譲渡損益の繰延
完全支配関係にある法人間の一定の資産の譲渡について、譲渡損益を繰り延べます(法法61条の13第1項)。 対象となる資産は、連結納税制度と同様に、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権および繰延資産であり、売買目的有価証券および譲渡直前の帳簿価額1,000万円未満の資産は除かれます(法令122条の14第1項)。
また、連結納税制度と同様に、譲渡損益が繰り延べられた資産がその後1回でも譲渡された場合には、たとえ完全支配の関係のある法人への譲渡であっても、もともとの(最初の)譲渡法人において譲渡損益を認識します。それは、譲渡法人において(繰り延べていた)譲渡損益を認識するタイミングは、「譲受法人側の譲渡、償却、評価替え、貸倒れ、除却その他政令で定める事由が生じたとき」および「譲渡法人と譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなったとき」と規定されているからです(法法61条の13第2項)。
同様に、子法人Aが子法人Bに譲渡するときは、100%グループ内の法人間の譲渡ですので、譲渡損益を繰り延べますが、子法人Bがその後当該資産を譲渡したときに、子法人Aにおいて繰り延べられていた譲渡損益を認識します。
必ずしもグループ外への移転等の時まで捕捉する必要はなく、譲渡法人においては、その後の再譲渡のときまで補足すればよいということになります。管理負担の面からいえば、同じ資産がグループ内で複数回譲渡されるような場合に、グループ外への移転等の時まで捕捉するとなると管理が面倒になりますが、その後の1回目の譲渡のときまでの捕捉で足りるのであれば、比較的対応しやすいものと考えられます。

100%グループ内の国内法人からの受取配当の取り扱い

(2)100%グループ内の内国法人からの受取配当の取扱い
完全子法人株式等(注1)に係る受取配当等について益金不算入制度を適用する場合には、負債利子控除を適用しません(法法23条1項、4項、5項)。これは、受取配当等の額の100%が益金不算入になるという意味です。

(注1)完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて(計算期間の開始の日から当該計算期間の末日まで継続して)内国法人との間に完全支配関係があった他の内国法人(公益法人等および人格のない社団等を除く)の株式または出資として一定のものをいいます(法法23条5項、法令22条の2)。

100%グループ法人間の寄付金の取り扱い

(3)100%グループ法人間の寄附金の取扱い
内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金についてその全額を損金不算入とするとともに(法法37条2項)、当該他の内国法人が受けた受贈益についてその全額を益金不算入とします(法法25条の2)。
会計上は、支出法人において寄附金(費用)、受領法人においては受贈益(利益)を計上しますが、支出法人においては別表4で加算、受領法人については別表4で減算の申告調整を行うことになります。
なお、100%グループ法人間の寄附金の取扱いについては、規定上、「法人による完全支配関係に限る」というかっこ書きが付されているため(法法25条の2第1項、37条2項)、同一の者が法人である場合には適用されますが、同一の者が個人(およびこれと特殊の関係のある者)である場合には適用されません。したがって、中小企業の場合に適用される場面は限られると思われます。

Q4.グループ法人内の資本関連取引については、どのようになりますか。

グループ法人内の資本関連取引についても、次のように重要な改正がいくつか行われます。

100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に譲渡する場合の取扱い

(1)100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に譲渡する場合の取扱い
従来、株式を発行法人に対して譲渡する場合(=取得法人側にとっては自己株式の取得)、下記の「①譲渡損が発生するケース」では、譲渡損が認識される一方で、みなし配当については益金不算入規定が適用されることで、節税を図れるケースがありました。それは、税務上、交付金銭等の額からみなし配当を差し引いた残額が株式の譲渡対価として取り扱われるためです。
平成22年度税制改正により、100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する場合には、譲渡対価の額を譲渡原価の額とみなし、譲渡損益を計上しないものとされました(法法61条の2第16項)。
会計上は、譲渡損益を計上しますが、申告調整により益金または損金のいずれにも算入しないように加減算することになります。
譲渡損益については不計上、みなし配当についても(関係法人株式等に該当するため)益金不算入となります。

(2)自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当の取扱い
発行法人が自己株式として取得することを予定している株式を取得し、予定通り取得された場合には、これにより生ずるみなし配当について益金不算入制度を適用しません(法法23条3項、法令20条の2)。この改正は、100%以外の法人間について適用される点に留意する必要があります(注2)。
従来、次ページの2つのケースのように、発行法人が自己株式を取得することを予定している株式を(発行法人に譲渡する予定の法人が)取得し、その後予定通り自己株式の取得がされますと、課税所得の圧縮効果が生じる場合がありました。
平成22年度税制改正により、発行法人が自己株式として取得することを予定している株式を取得し、予定通り(自己株式の)取得がされた場合には、これにより生ずるみなし配当について益金不算入制度を適用しないものとされました。譲渡損が計上される一方において、みなし配当が課税対象になりますので、上記のような課税所得の減額効果はなくなります。本改正は、租税回避行為の防止の趣旨に基づくものといえます。

ケース1

(注2)法人税法23条3項の規定において、「法人税法61条の2第16項の規定の適用があるものを除く」とかっこ書きが付されており、法人税法61条の2第16項の規定とは、前項の100%グループ内の法人の株式を発行法人に対して譲渡する場合である。

(3)清算所得課税
従来、子法人が解散し残余財産が確定した場合には、親法人の所有する子法人株式について株式消却損の計上が行われました。親法人において、一定の損金算入メリットが生じたわけです。ところが、平成22年度税制改正により、消却損の計上はできなくなります。
ただし、完全支配関係にある子法人が解散し、残余財産が確定した場合には、子法人の未処理欠損金額(=青色欠損金額のうち未使用のもの)を親法人に引き継ぐものとされました(法法57条2項)。
消却損の損金メリットはなくなる一方、子法人の未処理欠損金額の引継ぎが行われるメリットが発生します。

Q5.一定の規模の大法人の100%子法人について、中小企業特例措置法の適用が認められなくと聞きましたが、具体的にどのような法人が対象になるのでしょうか。適用時期についても教えて下さい。

資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人に係る次の5つの制度については、資本金の額もしくは出資金の額が5億円以上の法人または相互会社等の100%子法人には適用しないものとされました。資本金の額もしくは出資金の額が5億円以上の法人または相互会社等の100%子法人については、中小企業特例措置のうちの下記の5つについて適用できなくなるという意味です。

法律

資本金5億円以上の法人

資本金5億円以上の法人の100%子法人とされていますが、100%孫法人についても、右記の中小企業特例は適用除外となる点に留意する必要があります。また、「資本金の額もしくは出資金の額が5億円以上の法人」とのみ規定されていますので、資本金が5億円以上である外国法人の100%内国子法人についても同様の取扱いとなります。この場合の資本金5億円以上であるかどうかの判定については、外国親法人の外貨建ての資本金に対して、100%内国法人の各事業年度終了時の為替相場で換算して円貨額に引き直した数値によります。
なお、適用時期は、平成22年4月1日以後に開始する事業年度からです。

Q6.100%グループ内法人間で一定の資産が譲渡された場合に、譲渡法人において譲渡損益を繰り延べるとのことですが、どのような方法により繰り延べるのですか。

譲渡法人の処理

(1)譲渡法人の処理
税法上は、100%グループ内法人間で一定の資産が譲渡された場合に、譲渡法人において譲渡損益を繰り延べることになりますが、会計処理は税法に左右されることはなく、100%グループ法人間の取引については、譲渡損益を計上することになります。例えば、帳簿価額2,000万円の土地を100%グループ内法人に対して時価1億円で譲渡したときに、決算書上は8,000万円の土地売却益を損益計算書の特別利益に計上する必要がある点は従来通りです。したがって実務上は、申告調整による対応を行うことになると考えられます。
具体的には、会計上、譲渡損益を計上しますが、譲渡法人側において申告書別表4における加算または減算の調整対象とします。加算(留保)または減算(留保)としておいて、当該譲渡損益調整資産が再譲渡(または除却等)された日の属する事業年度において、譲渡法人の申告書別表4において、先と逆の減算(留保)または加算(留保)の調整を行います。
したがって、譲渡損益繰延資産については、その後の事業年度において再譲渡(または除却等)があったという情報を的確に入手したうえで、申告調整に反映させるという対応が必要不可欠となりますので、100%グループ法人同士の情報交換を緊密にしておく必要があると思われます。

(2)譲受法人の処理
100%グループ内法人間の一定の資産の譲渡について、譲渡法人において譲渡損益を繰り延べますが、譲受法人は取得価額(=時価)で譲渡損益調整資産を受け入れます。具体的な処理については、次の設例をご参照ください。

設例

Q7.100%グループ内法人間で一定の資産が譲渡された場合に、譲渡損益が繰り延べられ、その後譲受法人が再譲渡したときに認識されることはわかりました。一定の資産が眼下償却資産である場合は、繰り延べられた譲渡損益が譲受法人における償却に応じて認識されるようですが、どのように計算するのでしょうか。

方法1

減価償却資産に係る譲渡損益が繰り延べられた場合は、譲受法人における減価償却に応じて、一部実現していく形になります。
繰り延べられた譲渡損益のうち、譲渡法人における戻入額は、次のいずれかの方法により計算します。(方法1)
または(方法2)譲受法人のその資産の取得価額に占める償却費の損金算入額の割合に応じて、または、その資産の耐用年数にわたって、いずれかの方法によって譲渡法人において繰り延べた譲渡損益の戻入れを行うことになります。
なお、方法1によった場合、譲渡法人が譲受法人における減価償却費の損金算入額を確認して対応しなければなりませんが、方法2によった場合、耐用年数の月数に対する事業年度の月数に応じて戻入れを行うことができますので、事務負担の軽減につながります。

Q8.グループ法人税制と連結納税制度との関連性について教えてください。

グループ法人税制と連結納税制度の共通点は、次の通りです。すなわち、100%完全支配関係のある法人を一体としてとらえるという考え方に共通性があります。100%グループ法人の範囲も同様に規定されています。また、グループ内取引について一定の資産の譲渡について課税の繰延を行うという点に重要な共通性がありますし、寄附金の取扱い(支出側は損金不算入、受領側は益金不算入)も共通したものとなりました。
ただし、連結納税制度は選択制であるのに対して、グループ法人税制は強制適用という点において大きな相違があります。また、損益通算のないグループ法人税制と損益通算を前提とした連結納税制度にはその点において根本的な相違があります。100%グループ法人の中で所得がプラスの法人と所得がマイナスの法人が併存している場合には、連結納税制度の適用によるメリットも生じ得ます。
グループ法人税制の適用にあたって要求される管理体制の整備の問題を考慮しますと、連結納税制度を採用した場合との事務負担にそれほど大きな違いが生じないこともケースによっては想定されます。損益通算メリットが大きく、かつ、連結納税制度の開始に伴う連結子法人の時価評価課税のデメリットが比較的小さい企業グループの場合は、今回のグループ法人税制の創設が連結納税制度の選択の誘因として働くこともありうると思われます。

COLUMN 現物分配の規定が創設される!

平成22年度税制改正では、企業組織再編税制の中に「現物分配」が創設されました。「現物分配」とは、剰余金の配当(株式または出資に係るものに限る)またはみなし配当により株主等に金銭以外の資産を交付することをいいます(法法2条第12の6、12の6の2)。
現物分配のうち完全支配関係がある内国法人間で行われるものを「適格現物分配」とし、組織再編成の一環として位置づけて、(その移転する資産を帳簿価額により譲渡したものとして)譲渡損益の計上を繰り延べることになります(法法62条の5第3項)。
この制度を活用すると、次の図表のように、100%孫会社を100%子会社することが容易になります。従来は分割型分割などを活用して行っていましたが、手続面ではより容易になります。

COLUMN

ただし、現物分配を行う場合、会社法上の剰余金の分配規制が適用されるため、剰余金の分配可能額の範囲内で行う必要がある点に留意する必要があります。

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