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ZEIKENPLUS 2012 Summer

会計士 太田達也の 5分でわかる! 税務・会計 5,600万円のマグロと原価計算~史上最高値のまぐろの採算性~ 新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田 達也

新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田 達也
今年の築地市場における新春初競りに関して、驚くべきニュースが流れました。まだ記憶に新しいところかと思います。本年1月5日の東京築地市場で、青森県大間産のクロマグロが1匹5,649万円の史上最高値で落札されたというものです。2メートル18センチ、268キログラムのクロマグロが寿司チェーン店「すしざんまい」により落札され、昨年記録された最高値が簡単に更新されました。
このようなマンションが買えるような高値で落札し、果たして採算がとれるのかどうか、最高値で落札することによるメリットがそんなに大きいのかどうか、その点についてはあまり検証されていません。この問題について、原価計算の観点から、検証を行うものとします。

マグロ1匹で何貫?

マグロ1匹で寿司が何貫できるのか、この点が把握できないと、マグロの原価計算はできません。これについては、あるテレビ番組で実験をしています。50キログラムのマグロをスタジオで実際に握ってみた実験によると、2,321貫であったようです。
大体計算が合います。なぜならば、マグロの内臓などを取り出して、全体の約6割部分は食べられるようですから、50キログラムのマグロの約30キログラム部分が食べられると仮定すると、30キログラム÷2,321貫で1貫のネタの重さが約13グラムということになります。通常考えられている1貫の重さと大体符合します。
そこで、今回最高値で落札されたクロマグロに当てはめると、268キログラム×60%で約160キログラムが食べられる部分になりますが、160キログラム÷13グラムで約12,300貫作れるという計算になります。

マグロ1匹で何貫?

1貫の原材料費は?

原価計算では、原材料費、労務費および経費を集計して原価を算出します。今回のクロマグロに関しては、原材料費が原価の大半を占めると思います。1貫当たりのネタの原価はいくらになるでしょうか。簡単に計算できます。5,649万円÷12,300貫ですので、1貫当たりのネタの原価は4,592円になります。1貫にしては、ずいぶん高い原価ということになります。今回落札されたクロマグロだけに限定して考えた場合には、かなり高い売値でないととても採算が合わないことがわかります。「すしざんまい」では、1貫当たり大トロとあぶりトロを418円、中トロを313円で提供し、チェーン点全店で食べられたようですが、1日もたたないうちになくなってしまったようです。

採算のとれる価格は?

香港の寿司王といわれるリッキー・チェーン氏は、昨年まで4年間連続で最高値をつけて落札していますが、その氏と共同購入している銀座の有名な老舗高級寿司店「銀座 九兵衛」の3代目主人は、初競りの前に出演したテレビ番組で、「最高級のマグロをとるつもりでいる」とコメントをしていたようですが、落札できなかったことについて「キログラム20万円までは競っていたのに...」と残念そうにコメントをしたようです。
キログラム20万円ということは、1貫当たりのネタの原価はいくらくらいになるでしょうか。1キログラムのうちの食べられる部分を600グラムとすると、600グラム÷13グラムで大体46貫握れることになります。
20万円÷46貫で1貫当たりのネタの原価が4,347円ということになります。実際には、これにシャリの原価と人件費、経費が加わって原価となります。「銀座 九兵衛」は有名な高級店であり、中トロの握りを1貫2,000円くらいで出しているようですが、それでも採算がとれるのか不思議に思えます。
数年前までは初競りでも1匹600万円くらいの値段であったようですから、確かにここ2、3年の初競り価格は異常といえるものかもしれません。落札した社長がみずからテレビ番組で「実際の価値は600万円くらい」と発言しているようですので、原価計算の観点だけからみれば、正常な価格ではないと思われます。

採算のとれる価格は?

広告宣伝効果の大きさは?

広告宣伝効果の大きさは?

広告宣伝効果が大きいという指摘がよくみられますが、本当にそうでしょうか。
確かに「すしざんまい」のような全48店舗もあるようなキャパシティですと、5,649万円の最高値で初競りを落札したという報道が、全国ネットで各放送局によりされますと、そのマグロを食べてみたいというお客が各店舗に殺到したであろうことは容易に想像できます。そのお客さんたちはマグロだけを食べて帰るわけではなく、他のネタもおそらくお腹いっぱいになるまで食べたのではないでしょうか。
仮に、新聞やテレビの報道の影響により、普段であれば来なかったお客が1店舗当たり平均30組来たとします。1組(家族連れがメインとします)当たりの飲食費が平均1万円とすると、1店舗当たり30万円の売上増加につながり、30万円×48店舗で1,440万円の売上増加につながります。そのような効果が1日だけで終わるはずがなく、その後にもじわじわと及んだとすると、多少の回収はできているのかもしれません。
また、「すしざんまい」という店名も印象に残りましたし、最高値のマグロを落札したお店というブランドが付加されますので、長い目でみたときには決して損をしたというほどではないようにも思われます。
テレビCMと比較するのは乱暴ですが、連続テレビドラマの1回分の放送(CM1本から2本)で5,000万円といわれていますので、全国ネットで宣伝が流れることによる価値は一般に思われている以上のものであり、「すしざんまい」のような全国展開している大手の寿司チェーンだからこそ、その宣伝効果もそれに見合ったものになり、落札できたということもいえるかもしれません(昨年まで落札しているのも香港の大資本です)。
また、落札した社長は、「海外に持っていかれるより、国内で良いマグロを食べてほしい。東日本大震災や経済低迷があるが、日本みんなで頑張ろうと景気づけをしたい」と発言しています。この落札でもうけようということではなく、このような気持ちが本音としてあったのではないかとも思います。

1番儲かったのは誰?

落札されたマグロの落札価格のうちの約8割が、そのマグロを釣った漁師のもとに入るようです。
今回のマグロの場合、落札価格5,649万円ですので、5,649万円×80%で約4,519万円が漁師の収入になったものと推測できます。
ただし、漁師の仕事が大変であることはご存じのとおりです。船の燃料代はばかにならず、釣れない日もあることを考えると、かなりしんどい仕事であることは間違いないと思います。今回の最高値のマグロを釣った漁師は、宝くじに当たったようなもので、その意味では一発当てたときの夢があるようにも思われます。

回転寿司は儲かるのか?

今回取り上げた「すしざんまい」は、48店舗のうち4店舗は回転寿司の形態を採用しています。
回転寿司は人気のあるお店も少なくなく、儲かるように見えますが、その経営は非常に難しいともいわれています。
回転寿司は、注文を受けてからつくっているわけではなく、予測して先につくるという特徴があります。客の入りや客層などもみて、先行してつくることをしているわけです。ただし、商品が生ものですので、新鮮なものを出す必要性が高い一方において、逆に余ってしまった商品をある程度のところで見切って捨てる判断も必要になります。したがって、大量仕入れで原価率を抑える努力をしても、45%くらいの原価率になってしまうようです。人件費率がどうしても20%から30%くらいになりますので、それほど利益率が高いというわけではありません。廉価大量販売というスタイルがとれないと、なかなか利益は上がらないと考えられます。その点寿司ロボットを導入して、人件費率を抑える努力をしているところも最近みられます。
また、水産会社が経営していたり、チェーン展開している大手回転寿司のように、安く仕入れるルートが確立しているところはまだいいのですが、そうでないところは原価率を下げるために、海外から原材料を仕入れるところが少なくないといわれています。海外で低人件費で加工したものを仕入れるという方法ですが、ミョウバンなどの薬品や消毒薬が入っているものもあるといわれています。
また、ネタによって原価率が異なりますので、原価率の低いネタ(例えば玉子、サラダ巻、フルーツなど)を多く流すという回転寿司もあるようです。

ここで太田先生に質問!

ここで太田先生に質問!

1.ネタによって原価はどの程度違うのでしょうか?
2.回転寿司は儲けるために、どのような経営努力をしているのでしょうか?
3.標準化、効率化だけでは収益を上げることはできないのでしょうか?

≫ 回答はこちら

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