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ZEIKENPLUS 2012 Summer

会計士 太田達也の 5分でわかる! 税務・会計 5,600万円のマグロと原価計算~史上最高値のまぐろの採算性~ 新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田 達也 先生の回答

Q1 ネタによって原価はどの程度違うのでしょうか?

原価の高いネタ
寿司のネタによって原価はかなり違います。回転寿司の性格上、原価が高いからといってそれをそのまま売価に転嫁しにくいので、原価の高いネタの利益率は低くなる傾向にあります。
原価が1番高いといわれているのがウニです。1皿126円(税込み)均一の回転寿司のお店によると、ウニの原材料費が1皿当たり85円とのことで、これに(1皿当たりの)人件費40円および家賃や光熱費などの経費12円を加えると、1皿当たりの原価が合計で137円になります。これだけですと、赤字になることは明らかです。
2番目に原価が高いのがマグロです。1皿当たりの原材料費が78円ということですので、人件費と経費を加えると、少し赤字が出ます。
また、ハマチ、イクラ、キングサーモンなども原価が高いネタの上位にくるようです。

原価の低いネタ
逆に、こはだ(1皿当たりの原材料費26円)、漬けなす(1皿当たりの原材料費28円)、サバ(1皿当たりの原材料費30円)などは、原価がかなり低い部類に入るようです。また、ツナやエビも低い部類に入ります。 以上から、ネタによって原価率はかなり違ってくることがわかります。最も高い部類のマグロのトロの原価率は60%~70%、最も低い部類のサラダ系の軍艦巻は20%~30%といわれていますので、かなり差があることがわかります。

トータルでは平準化される?
お店としては、原価率の低いネタも万遍なくレーンに流れるように配慮しているはずです。また、お客さんにとっても、原価率の高いものばかりを偏って食べても満足感が得られるわけではないですから、お店からみれば各お客から大体平均的に利益が得られるようになっているものと思われます。

Q2 回転寿司は儲けるために、どのような経営努力をしているのでしょうか?

回転寿司の原価率は、飲食店の中では高い部類といわれており、その中で利益を得るための涙ぐましい経営努力がされているようです。
原価率の抑制
原価率をいかに抑えるかが、いかに儲かるかを大きく左右することはいうまでもありません。この点については、大手回転寿司チェーンは圧倒的に有利な立場にあります。大量に安く仕入れて、多くのお客に提供する。これができるのは大手ならではのことです。大手寿司チェーン店で最も売上を上げているところは、年間売上が約630億円です。ほかにも、400億円から500億円の売上を上げているところがあります。このような大手になりますと、共通の仕入部門がチェーン店全店の仕入を一括して行いますので、仕入の量がそれこそ半端ではありません。かなり安く仕入れることができるメリットを享受できることになります。

原価率を抑えるための涙ぐましい努力
原価率を低く抑えるための経営努力は、枚挙にいとまがありません。例えば、①原価の安いものをレーンに途切れないように流す、②前日に残ったしゃりを使う、③1つのお皿に良いネタと悪いネタを組み合わせて入れる、④特別に安く仕入れることができたものを本日のおすすめとして大々的に売る、⑤いったん引き揚げたネタに霧を吹いて再度レーンに戻す、などあらゆる手段を使って利益を上げる努力をしないと、なかなか競争に勝ち残るのは難しい面があると思われます。

廃棄率の抑制
まず廃棄率を抑えるための徹底した努力があります。ある回転寿司チェーンでは、入店者の大人と子供の数をレジで入力し、流すべきお皿の数を厨房に表示するシステムを採用しています。また、お皿の下にQRコードを貼り、それをセンサーが読み取ることにより、一定時間を超えて廻っているお皿を自動的に廃棄するシステムを導入しています。さらに、レーンの途中にハネをつけて、お客のいないところをお皿が廻らないように工夫しているところもあります。
また、お皿にふたをかぶせたり、加湿器を置いたりするのも、長い時間持たせるためのものであり、廃棄率の抑制につながります。

回転寿司経営の鍵となるのは、どんなことでしょうか?

経営の鍵
以上の解説から、回転寿司の経営は、原価率と廃棄率の2つが重要な鍵を握っていることがご理解いただけたかと思います。この2つのポイントは、飲食店全般にも共通して当てはまる面があるように思われます。本コラム「会計士 太田達也の5分でわかる税務・会計」の第1回で、「食べ放題の店はなぜ儲かる?」においてバイキングの店で利益が確保される理由を説明しました。やはり原価率を低く抑えることと、食材をできる限り余らせないように利用するという2点が重要であることを強調しました。

原価率のジレンマ
原価率が重要であると説明しましたが、回転寿司のネタの原価率(売価に対する原材料費のみの比率)は、42%~48%が1つのラインといわれています。40%を切るとお客の満足度が下がり、50%を超えると経営上厳しくなるという意味で、そのあたりがラインになってくるようです。ということは、いかに原価率を下げる努力をしても、40%代前半の水準が努力の限界点になってくるのではないかと考えられます。後は廃棄率の抑制に努めることにより、何とか競争に勝ち残っていけるのかと思われます。

今後の方向
今後の方向性を予測したいと思います。原価率を抑えることが重要である点を踏まえると、第1に、今後は寿司ロボットの活用が現在よりは増加する可能性があると思われます。後は技術的にしゃりをどこまでおいしく握れるのかという問題次第であると思います。
第2に、システム化がより進むように思われます。現在は、一部のチェーン店において、手元にある回収口にお皿を入れると自動的に代金が計算されるシステムを導入しているようです。人件費の節減メリットだけでなく、計算間違いも起こらないはずです。また、タッチパネルによるオーダー・システムは今では珍しくなくなりましたが、これもシステム化の表れです。
第3に、ベルトコンベアについては、チェーン式からマグネット式に移行していくことと予想されます。マグネット式のほうが、掃除がしやすく、音も静かという利点があるようです。

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