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ZEIKENPLUS 2013 Winter

会計士 太田達也の 5分でわかる!税務・会計 スーパーマーケットの原価計算 ~スーパーはなぜお惣菜を売るのか?~ 新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田 達也 先生の回答

1.売上原価の算定に必要な期末の在庫高は、どうやって算出しているのでしょうか?

取扱品目が多い場合
売上高に対応して計上される売上原価の算定は、次の算定式によります。

当期の売上原価 = 期首の在庫高 + 当期の仕入高 - 期末の在庫高

売上原価を算定するためには、期末の在庫高を確定させる必要があります(期首の在庫高は、前期の期末の在庫高とイコールですので、当期末に改めて算出する必要はありません)。
スーパーの取り扱う品目は、ご承知のように多種多様です。上の算式中の期末の在庫高はどのように算出するのでしょうか。小売業の場合、取り扱う品目数が多いケースが多いわけですが、同じ種類のお魚でも日々仕入値は変動しますので、個々の品目ごとの仕入値を調べることは大変であり、実務負担が発生します。そこで、次に説明するような方法が多く採用されています。

売価還元法とは?
取扱品目が多い場合には、売価還元法という方法で期末の在庫高を算出するケースが多くみられます。売価還元法とは、期末棚卸を商品の売価で行い、これに原価率を乗じて期末在庫高を算出する方法です。

期末在庫棚卸高(売価) × 原価率 = 期末在庫高

スーパーやコンビニのように、取扱品目が多い業種の場合には、在庫数量の管理とPOSシステムで品目ごとの売価の管理はされていますので、この売価還元法を用いているケースが多くみられます。

売価還元法のメリットは?
売価還元法を用いると、受払記録を簡略化して管理することができるため、在庫管理の負担を軽減できるメリットが生じます。ただし、売価還元法を適用しても、期末の各品目の数量の確認、いわゆる「棚卸」は必ず必要です。

2.実際にお惣菜で成功し、最高益となったスーパーがあると聞いたのですが、その成功の秘密は何でしょうか?

お惣菜で成功!
埼玉県にある食品スーパーのY社は、お惣菜で成功し、最高益を上げています。地元密着型のスーパーとして、以前から優良企業として評価されています。お惣菜に明らかな強みがあり、他社からの見学訪問が絶えないといわれています。

お惣菜の利益率
お惣菜で成功したY社は、18期連続増益と業績好調です。売上高営業利益率が4%を超えており、業界他社と比べると高収益体質です。このY社では、粗利益率(売上総利益率)は、生鮮が28.54%、グロッサリー(食品メーカー商品)が23.38%であるのに対して、お惣菜部門は49%に上ります。このお惣菜部門の利益率が会社全体の利益率を高めている要因であることは一目瞭然です。

成功の秘密?
景気が低迷している現在において、給料もなかなか上がりにくく、外食を極力減らし自宅で食事をとる傾向が強いようです。これを消費者の内食指向といいます。Y社はお惣菜部門にもともと強みがあり、消費者の内食指向が追い風に働いたとみることができます。特に単身者向けと高齢者向けのお惣菜が伸びたと分析されています。 スーパーマーケットの経営は、3S主義といわれていて、単純化(simplification)、標準化(standardization)、差別化(specialization)の3つを追求することが目標とされてきました。スーパーの店頭は標準化された品ぞろえが行われ、単純化された作業体制になっており、かつ、その2つが実現できることで差別化されると考えられています。欧米の流通業界では、非常に重要な考え方であると認識されています。
加工食品にこの3S主義は当てはまりますが、お惣菜売り場にはこの3S主義が当てはまらないと考えられます。地元密着の品ぞろえが重要であり、標準化すると逆に売れなくなるおそれがあります。様々な種類のお惣菜が用意されていて、その日の気分により食べたいものが選べることがお客さんのニーズに適います。また、単身者向けや高齢者向けというようにお客さんのニーズに合わせたきめ細かい対応も重要です。もちろん味が良くなければ流行りません。作業の単純化も図りにくいと考えられます。

3.標準化、効率化だけでは収益を上げることはできないのでしょうか?

標準化、効率化が命題?
日本が高度成長を続けていた時代においては、消費は拡大する一方であり、スーパーマーケットもチェーンビジネス化され、経営も合理性が追求されていました。3S主義と表現されるように、品ぞろえについては標準化を図り、作業体制も単純化され、特にきめ細かいサービスとか味の良さという要素はそれほど追求されていなかったと思われます。
ところが、成長も減速し、人口も増えない時代になると、このような観点だけでは経営が行き詰まるところも出てきます。Y社の成功事例は、その点についてヒントを与えてくれているように考えられます。

科学的な分析の限界?
スーパーマーケットでは、商品構成グラフを作成して品ぞろえにそれを反映する手法が使われてきました。商品構成グラフとは、品種ごとの品ぞろえの状況を表すものです。一定の品種(カテゴリー)ごとの価格ごとの数量を表したもので、横軸に価格、縦軸に販売数量(または陳列数)をとり、グラフ化することによりいくらの価格帯の商品をどの程度陳列するかを判断する材料にします。また、自店と競合店のグラフを同一座標に表示することにより、それぞれの価格政策や品揃え政策を比較し、自店の商品政策の改善を行う際の指標とします。
この手法には一定の限界があると思われます。標準的な商品(メーカーが作った既製品等)であれば、品ぞろえの欠点を補うメリットがあると考えられますが、お惣菜の場合は味が重要な要素ですので、価格と数量との関係はほとんど意味がありません。また、その地域に密着した戦略を講じないとY社のように成功しにくい面があります。

規模のメリットは通用しない!?
スーパーをチェーンストア化し、店舗数が増えてくると、お惣菜を1箇所で集中して作って効率化を図ろうとする例がみられます。ところが、そのような政策は失敗している例が多いといわれています。それは、確かに効率化は図れますが、味が落ちるからです。お惣菜に関しては、大量生産方式はうまくいかないのが通例のようです。消費者が手作りの味を求めている点を軽視すると、そのような過ちをすることになります。
標準化、効率化というこれまでのスーパーの経営が通用しないところに難しさがあります。しかし、その点を課題として取り組んでいかないと、今後の経営はますます厳しくなるようにも思われます。

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