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ZEIKENPLUS 2014 Winter

新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田 達也
2014年1月からNISA(少額投資非課税制度)がスタートします。また、従来の上場株式等の譲渡所得および配当所得に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)の特例措置は2013年12月31日をもって廃止され、2014年1月1日以後は、本則税率である20%(所得税15%、住民税5%)が適用されます。
この改正により、2014年以降の株式投資の税制上の取扱いが大きく変わることを意味しています。NISAを利用するにあたっての留意点は何か、また、NISAの導入により株式市場にどのような影響があるのでしょうか。

NISAとは?

 

NISAは、個人を対象とした少額投資非課税制度のことであり、イギリスにそのモデルがあります。20歳以上であれば、誰でも口座の開設ができ、推定では500万人の利用者が見込まれているようです。この制度を利用するためには、銀行・証券会社等の金融商品取引業者に非課税口座(NISA口座)を開設し、非課税管理勘定を設定する必要があります。
毎年100万円の新規投資額を限度として、NISA口座で取得した上場株式等の配当や譲渡益が、非課税管理勘定を設けた日の属する年の1月1日から最長5年間非課税となる制度です。各年分ごとに、1非課税管理勘定のみの設定が認められ、1非課税管理勘定における非課税投資額の上限は100万円です。
2014年から2023年までの10年間、毎年新たな非課税管理勘定の設定ができますが、それぞれの非課税管理勘定の非課税となる有効期間は最長5年間となっており、ある年における非課税投資枠は最大500万円ということになります。
ポイントは、毎年100万円の新規投資額を上限にしているだけですから、最大投資総額500万円の投資について利益がいくら出てもその全額が非課税になるという点です。

NISAのメリット

NISAのメリットは言うまでもありません。2014年1月から上場株式等の譲渡所得および配当所得に係る軽減税率が廃止され、本則の20%の税率が適用される状況下で、非課税となるメリットは大きいといえます。どの程度の利益が出るかは、今後の株式市場の動向にも大きく左右されますが、20%かゼロかの違いは大きな違いとなります。

NISAのデメリット?

NISAのメリットばかりが取り上げられ、デメリットが意外に理解されていないようです。利用にあたっては、次のデメリット・留意点を確認する必要があります。
第1に、損益通算ができません。すなわち、NISA口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます。損失は切り捨てられるという意味です。NISA口座以外の口座(特定口座や一般口座)であれば、損益通算や3年間の損失繰越()をすることができますが、NISAの場合はそれが認められません。他の口座の株式等との損益通算もできませんし、NISA口座内の損益通算もできません。利益が出たときはメリットが生じますが、損失が出たときはデメリットのみが生じることになります。

)2010年1月1日から、「上場株式等の譲渡損失」と「上場株式等の配当等(公募株式投資信託の収益分配金を含む)」との通算が可能となりました。通算するためには、申告分離課税を選択して確定申告することが必要です(ただし、2011年1月1日からは「源泉徴収ありの特定口座」に配当等を受け入れて、当該口座内で生じた譲渡損失との間で、確定申告をせずに通算することが可能)。また、上場株式等を譲渡して生じた損失のうち、その年に控除しきれない金額は、翌年以降3年間にわたり株式等の譲渡益、および上場株式等の配当等から控除することができます。


第2に、 NISAの対象銘柄は限定されています。すなわち、NISAの対象銘柄は、上場株式、上場新株予約権付社債、公募株式投資信託の受益権、上場ETF、上場REITなどです。また、金融商品取引業者によって、NISA口座で取り扱える銘柄・種類が異なります。この点、銀行は株式を取り扱えないため、投資信託が中心になります。NISA口座を開設する前に、その証券会社等で取り扱っている銘柄・種類を確認する必要があります。
第3に、年間100万円までの新規投資した株式等についての非課税制度ですので、1度売却した部分の非課税枠について再利用することはできません。
例えば2014年1月から8月までの間にA株とB株を合計90万円購入し、同年9月にA株を売却したとします[下図参照]。この場合、A株の投資額40万円は使用済みであり、再利用できません。10万円の未利用枠だけが残っていますが、翌年への繰越はできません。

1口座しか開設できない?

 

NISAは、次の設定期間ごとに1回しか口座を開設できないルールになっています。証券会社や銀行が顧客の囲い込みに必死であることもうなずけます。
売買手数料も、銀行・証券会社ごとに異なりますし、取扱銘柄も異なっておりますので、開設にあたっては比較検討のうえ慎重に選択する必要があります。

シミュレーション

 

NISAと従来からの特定口座を両方とも持つことは可能です。ケースによってNISAが有利になるのか不利になるのか、シミュレーションをしておく必要があるでしょう。
大きく4パターンに分けてシミュレーションを行います。NISA口座と特定口座でそれぞれ株式を100万円ずつ購入し、翌年に売却したと仮定します。そのときの売却損益が次のケースであるときの損得を検討してみます。
第1のケースの場合、NISA口座の利益は非課税ですが、特定口座の利益に対して(本則)20%の税金6万円がかかります。ということは、2013年までの軽減税率の時期に60万円の利益に対して10%税金がかかるのと実質何も変わらないということになります。
第2のケースの場合、NISA口座の利益は非課税ですが、特定口座の損失を特定口座内での損益通算および3年間の損失繰越できますので、このパターンのメリットは大きいといえます。
第3のケースの場合、NISA口座の損失は切り捨てられる一方で、特定口座の利益に対して(本則)20%の税金がかかります。明らかに不利になるケースです。
第4のケースの場合、NISA口座の損失は切り捨てられる一方で、特定口座の損失は特定口座内での損益通算・繰越損失の対象となります。ただし、NISAを利用しなかった場合には、60万円が損益通算・繰越損失の対象になるわけですから、不利になるケースといえます。
このようにNISA口座は、利益が出せなければデメリットだけで、利用した意味がないということがわかります。

中長期投資向け?

 

非課税枠をフルに活用するためには、短期売買は明らかに適さないと考えられます。利益が出れば出るほどメリットが大きくなりますから、中長期の投資で、安定的に資金を寝かしておける投資に向いているといえます。
したがって、一生のライフサイクルの中で、住宅資金や教育資金が必要になる時期を見込んで、いつまで運用に回し、いつまでに回収すればよいかの資金計画を立てて、計画的に対応することが重要であると思われます。ただし、そのように使途が予定されている資金の運用については、安全性を十分に考慮する必要もあります。

株式市場への影響は?

NISAの創設は、大口投資家にはあまり影響がないように思われます。一定の資金で頻繁に売買する大口投資家にとっては、損益通算や3年間の損失繰越のメリットを重視すると考えられます。
今回の改正のねらいは、銀行等の金融機関の預貯金を少しでも株式市場に振り向けてもらうということですので、実際にお金の流れも金融機関の預貯金の一部が株式市場に回るという影響になるように思われます。とはいえ、日本における個人の金融資産は、1600兆円を上回る規模になっているということですから、その一部でも株式市場に流入する影響は、決して小さくありません。株式市場の環境が明るくなることを期待したいものです。

ここで太田先生に質問!

1.どこの金融機関を選べばよいの?
2.投資手法(投資スタンス)によってはNISAのメリットは活きないってホント?
3.値下がりして塩漬けとなった場合はどうする?

≫ 回答はこちら

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